エーテル仮説

光の速さの不思議

(2015年06月07日更新)

  • キリさんの謎の言葉。エーテル。 機械の体を手に入れるために、銀河を旅する少年と一緒に旅立つ美女のことではありません。 エーテル。 何だか美しい響きのこの言葉が今回の主役です。

    ■ニュートン物理学

    さて、エーテルの説明にすぐ入りたいところですが、その前の予備知識として、物理学の基本概念を打ち立てたニュートン物理学のお話から始めます。 ニュートンは皆さんご存知の通り、万有引力の法則で有名な偉人です。 りんごが落ちて引力を発見したエピソードでも有名です。 余談ですが、その時のりんごの木の子孫は、日本のどこかにも植えられていたように記憶しています。 ちなみにニュートンは引力を発見したと思っている方も多くいらっしゃるようですが、正確には地上で働く力学(りんごの落下運動)と天体の運動(公転運動など)を同じ法則として統一した人です。 どういうことかというと、そもそも公転運動については、太陽からの何がしかの力を受けて行われていることはすでに知られており、その力が何によるものかの答えは出ていませんでした。 ニュートンは先にあったケプラーという人の第3法則というものを用いて、万有引力の法則を導きます。 本当にざっくり書くと、ケプラーは第1法則の中で惑星の公転運動は、太陽を一つの焦点として楕円軌道上を動くことを見つけます。 当時は宗教的な理由もあって、公転運動は太陽を中心に円軌道上を動くと思われていたので、それを数的に導いたのはそれなりに驚きはあったのかもしれません。 次の第2法則の中で公転運動での惑星と太陽を結ぶ線分が一定時間に描く面積が一定であることを発見します。 これにより公転運動でのある位置での速さを正確に計算できるようになります。 現在では常識とされる太陽の近くに行くと速く動き、遠ざかると遅くなることが分かります。 そして第3法則では惑星の公転周期と太陽との距離との相互関係を求めることができるようになり、これにより太陽からの距離が分かると公転周期が分かり、逆に公転周期が分かると太陽からの距離が分かるようになります。 この計算式は今でも惑星間の距離を導くのに使われているようです。 ケプラーの法則から導かれる円運動をしている時に、ニュートンはその向心力(曲線起動で動かす力。水の入ったバケツを回す力が向心力。水をバケツにとどめる力を遠心力)が、質量に比例し、円運動の半径の2乗に反比例していることを見つけます。(逆2乗則) 一方で地球の引力が月までの距離の2乗分の1になっていることもあわせて発見し、地球が物質を引く力と、月が地球の周りを回るときの向心力が同じ、距離の2乗に反比例していることを確認することに成功しました。 これこそが万有引力の法則なのです。 りんごが落ちて発見したのは、惑星運動と重力の関係性に気づいたということなのかもしれませんが、そこには先人の知識があったからであって、その知識からアイデアを得たというのが正解なのかもしれませんね。 ニュートンは他にも高校数学で習う微分積分法や、光の粒子説など、今も応用される理論を作った智の巨人です。 これも余談ですが、ニュートンは弾性体に加えた力とひずみが比例するというフックの法則で有名なロバート・フックと対立をしていて、一説にはフックの惑星の運動についての理論を参考にしているとも言われています。 1687年に出版する「プリンキピア」(自然哲学の数学的原理)によって公開され、ニュートンは物質の運動が力学法則として決定論的に決められるということを説明します。 要は全ての物質は法則に基づいて動くのだということを知らしめたわけです。 17世紀にです。驚きですね。 日本はまだ徳川綱吉の治世で、生類哀れみの令なんかが出ていた頃のようです。 このニュートンが見つけた物理学の基礎法則は言ってみれば、この世界全てを説明する法則でした。 しかし物質の運動が決定論的に説明されるはずのニュートン物理学も限界が訪れます。 それが「光」の存在です。

    ■ニュートン物理学の矛盾とエーテルの登場

    前項の力の統一理論の中で、電磁気力についての説明をしましたが、その中で、マックスウェルという人の名前が出てきます。 この人は電磁気の統一理論をまとめた人ですが、この中で光の存在を「光も電波と同じく波(電磁波:振動により伝わる)であり、いつも一定の速さで伝わる」としました。 光は波な訳ですから、波はその媒介する物資がないと伝わらない。 しかも速さというものはニュートン物理学上では、「何に対して」が無ければ意味を成しません。 例えば時速60キロで進む車に乗る人が、車中で時速20キロでボールを投げると、そのボールの速度は、車に乗る人には時速20キロかもしれませんが、道路から見る人には加速され、時速80キロに見えます。 要は何に対してが無ければ速度は図ることができません。 光の速度は何に対して一定の速さなのかが説明できない当時の人は、宇宙には架空の物質エーテルが満ち満ちていて、エーテルが光を伝え、その速度がいつも一定であるということで解釈しようとします。 エーテルって何?という解釈は無かったようですが、現在の科学では、宇宙にはブラックマター(暗黒物質)と呼ばれるもので満ちているので、そこまで間違いでもなかったようです。 さて光の伝わり方の謎は解消されたとして、問題の光が一定の速度かどうかについての実験方法は、理屈上はいたって簡単でした。 進行する宇宙船で進行方向に光を放つ場合と、進行方向とは逆に光を放つ場合と比べた時を計測すればよいわけです。 光の乗り物に対するスピードは、光の速度より乗り物のスピード分遅くなり、逆は乗り物のスピード分早くなるわけです。 この実際の実験は、地球上で行われました。 そもそも地球は時速7200キロメートルで太陽の周りを回っています。 進行方向が分かればそれぞれの向きに光を照射して計測すればよいわけです。 この実験に名乗りを上げたのが、物理学者アルバート・マイケルソンと協力者もエドワード・モーリーという人で、鏡を使った実験機を使い合成則が成り立つか調べます。 実際の実験は極々精緻なものでしたが、結果は「光の速さは一緒」だったのです。 つまり光はどの様な状況においても一定のスピードなのです。 この瞬間にエーテルの存在は消し飛びますが(つまり光は何かを媒介にして進んでいない)、同時にニュートン物理学の運動法則にも合わない。 この答えについて、20世紀最大の天才、アインシュタインの相対性理論が謎を解き明かすことになります。

    ■時間は人によって変わる?

    当時の人々はこの光の速度の不思議を、ひょっとしたら光の速度のような限界の状況になった場合は、もっと細かい精緻なものさしが必要ではないかと考えます。 要はニュートンの運動法則は正しいとして、計算方法がちょっと変わるのかもしれないということです。 エーテルといい若干つじつま合わせの感じはありますが、この考えもアインシュタインの登場によって否定され、光の速度の謎に近づいていきます。 アインシュタインは光の速度が一定である代わりに、高速で動く乗り物に乗った人と、道路で見ている人では時間が異なると言い出します。 分かりやすく言うと、毎日新幹線に乗っている人の時計は遅れるということでしょうか。 その差が極々小さなものなので日常生活に支障はありませんが、光の速度になるとそうはいかなくなります。 光速の宇宙船に乗った人は、地球に居る人より時間がゆっくり流れ、1年して戻ったら、兄弟が皆ふけて自分より年上になっていた、見たいな話がSFでありますが、理論上は現実にこういったことが起きてしまいます。 しかし、光速に近づくと、時間はゆっくり流れるといわれても、光の速度と同じスピードで走る宇宙船から見た光の速さが、止まったときと同じ秒速30万キロメートルのスピードだといわれても、「じゃあ宇宙船の速さはどこに行ったんだ」ということになってしまいます。 ここで本当に高速で動く人の時間はゆっくり流れるのか?ということについて再度考えて見ます。 例えば電車に乗っている人がボールを真上に投げて落ちてくるまでの時間を2秒とします。 同時に地上でも同じことをしてみます。 この時電車と地上とでは同じ2秒でボールは着地しません。 なぜか? 電車でボールを投げた場合、進む距離は列車の加速分上乗せされるため、列車で上げられたボールの動いた距離は、地上で上げられたボールよりも進みます。 距離が長くなるわけですからその分時間も長くかかるはずです。 つまり同じ2秒でもボールの進む距離が違うわけですから、高速で動く人の時間はゆっくり流れているわけです。 要は高速で動く物体の時間と距離(空間)は 変化するのです。 この考えに基づいて考えるとき、光は一定なので、光速で進む宇宙船と光が併走することはできなくなります。 何故なら時間と空間は変化するからです。 どうでしょうか?理論や公式が無いので想像だけのちょっとややこしい世界ですが、とても興味深い世界ではないですか?
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